第二話

――体が重く、頭が猛烈に痛い。
ガンガンと打つような痛さを堪え目を開けると、見慣れぬ白い部屋に寝ていると理解した。白衣の保健医と直江が話している声が聞こえる。

「夏風邪をひいちゃったみたいね、今日は少し冷えたから。そんな重症でもないから心配しないでください、先生」
「そうですか…。もう早退させた方がいいですかね」

思い出した。体育の後あまりにも体調が悪く、譲に保健室へ連れて行かれたんだ。そんでそのままベッドを借りて寝入ってしまったのか。

「じゃあ親御さんに電話して迎えに」
「いえ彼は一人暮らしですし…私が車で送っていきます」
「ならよかった。お願いしますね」

直江が送ってくれんのか。でもきっと行くのは直江のマンションだろう。
担任が早退する生徒を送る先が自宅って、何とも変な感じだ。

「…仰木さん、歩けそう?」

直江に手伝われ身を起こす。視界に譲達が持ってきたらしき俺のバックが写った。

「…歩けっから。だいじょうぶ…」

若干ふらつきながらもベッドから降りる。
歩けないなんて言ったら、学校だということも構わず抱き抱えて歩きそうで怖い。
手を伸ばした先のバックは直江に奪われてしまった。




途中で俺のアパートへ寄り保険証を持って病院に向かう。
貰った薬を飲んだ後、いつもの客用の布団ではなく直江のベッドに寝かされた。

「ごめんなさい…傍にいてあげたいけど、仕事に戻らなくちゃいけないんです。帰りにアイス買ってきますよ」
「アイス…?」
「ええ。何がいい?バニラ?チョコレート?それと蜜柑?」
「…蜜柑」
「分かりました。出来るだけ早く帰って来るから、大人しく寝てて」

頭を優しく撫でられる。薄れていく意識の中、口から出た返事は多分言葉にならなかった。
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